研究開発項⽬4「個体間⽐較可能な効⽤表現の霊⻑類神経システムの包括的理解」

研究開発課題4-1
「効⽤の神経活動表現と報酬の主観的価値の神経活動表現の照合」

研究課題推進者(PI)

⼭⽥ 洋

筑波⼤学 医学医療系
准教授

ヒトの価値観・主体性は、脳の活動から⽣まれる。この仕組みを理解し、多様なヒトの主観を客観的に評価し、集約するためには、個体の主観を表現する詳細な脳の仕組みを明らかにすることが⼤切である。しかし、ヒトの脳を⽤いてそれらの主観を⽣み出す詳細な仕組みを明らかにする事は簡単ではない。そこで、ヒトに最も近い実験動物のマカクザルを⽤いることで、ヒトの⾮侵襲脳機能イメージングでは測定不可能な神経細胞活動を測定し、ヒトにおける効⽤の脳指標およびその個体間⽐較の妥当性を検証する。測定された神経細胞活動から個体の主観を再現する技術(デコーディングと呼ばれる)を⽤いるとともに、「ヒト脳指標による喜びと志の個⼈間⽐較技術開発」で得られた所⾒と⽐較・検討を⾏う。このヒトとサルの種間⽐較を積極的に進めることで、ヒトに備わった多様な主観を客観的に評価するための科学的な枠組みを構築し、多様な価値観を評価するための⽣物学的な証拠を⾒つける。

研究開発課題4-2
「報酬の主観的価値の神経活動表現の霊⻑類―齧⻭類間⽐較と個体間比較」

研究課題推進者(PI)

⼩⼝ 峰樹

⽟川⼤学 脳科学研究所
特任准教授

報酬とは、それを獲得したり消費したりすることで、私たちが充⾜を感じることのできるもの全般を指す。それは⾏動の⽣起頻度に変化をもたらし、適応的な⾏動が成⽴するための基礎となるだけでなく、喜びなどの快情動と結びつくことで、われわれの幸福を構成する中核をなすものである。報酬は外的刺激のもつ客観的な特性だけでは決まらず、動物の内部状態(ヒトの場合には価値観も含む)に⼤きく左右される主観的なものである。本研究開発課題では、ヒトと近縁性の⾼いマカクザルを⽤い、価値低減操作や神経回路操作といった⼿法を駆使しながら、複数の脳領域から多数の神経細胞活動を同時計測・解析することで、階層的に処理される報酬の主観的価値の精細な神経表現を明らかにすることを⽬指す。そして、そこで得られた知⾒を、ヒトを対象とした他の研究開発課題に提供し、報酬の主観的価値と効⽤の神経システム表現の照合に資する。また、げっ⻭類を対象とした研究開発項⽬5により得られる、神経システムにおける報酬の主観的価値表現の結果とも⽐較することで、報酬価値表現の種間における共通点と相違点について検討する。